乳がんの治療で使用される抗がん剤「アブラキサン」の供給が一時的にストップされるというニュースが舞い込んできました。
「アブラキサン」の在庫は10月中頃まであるものの、それ以降の供給は止まります。
「アブラキサン」は乳がん治療で使われる他、切除不能な膵がんの治療において重要な点滴薬で、ほかに胃がん、非小細胞性肺がん治療にも使われていて、国内では年間4万人が使用しています。
抗がん剤「アブラキサン」 供給一時停止
製造販売元の大鵬薬品工業によると、生産する米企業で製造工程の検証があり、再評価の必要が生じたためということです。
いまのところ、出荷再開のめどは立っていないようです。
会社によりますと、輸入しているアメリカのメーカーから「製造工程の定期的な検証で再評価が必要となった」と連絡があったということで、すでに出荷調整に入っていて、ことし10月以降、少なくとも4週間は供給を一時的に停止する見通しだということです。
ちなみに、現在、流通している薬の品質に問題はないので心配は無用です。
日本臨床腫瘍学会など関連学会での声明文によると、現在治療中の患者さんの使用を最優先にして、あとは代替治療が難しい患者の使用が優先されるそうです。
あとは替わりになる代替治療を積極的に検討するということですが、すい臓がんの患者の中には代替薬がないケースもあり、治療への影響も懸念されるということです。
日本臨床腫瘍学会の石岡千加史理事長は「この薬を使って効果が出ている患者が供給停止によって効果が途絶えてしまう。患者の数が非常に多く治療の選択肢も少ないため、非常に影響が大きい」と話しています。
大鵬薬品は「医薬品の安定供給が確保できず、患者や医療関係者の皆様に多大な迷惑をおかけし心よりおわびします」としています。
抗がん剤「アブラキサン」供給停止の理由
大鵬薬品は供給停止の理由について「アメリカのメーカーから『製造工程の定期的な検証で再評価が必要になった』と連絡を受けた」などと説明していますが、詳しい内容は明らかにできないとしています。
ですので、現時点では供給停止の理由は不明です。
抗がん剤「アブラキサン」について患者団体が厚労省や大鵬薬品などに要望書
全国のがん患者会でつくる「全国がん患者団体連合会」は厚生労働省や大鵬薬品などに要望書を提出しました。
- 供給停止に至った理由や対応策、今後の見通しなどについて速やかに情報公開を行うこと
- 医療機関での在庫を把握して、特に必要とする患者に対して適切に配分されるようにすること
- 最新の状況をホームページなどで公開すること
抗がん剤「アブラキサン」の供給停止で治療難民への懸念
全国がん患者団体連合会の天野慎介理事長は「何が起きているのか情報提供がなく、患者からは治療はどうなってしまうのかという不安の声が寄せられている。治療難民が生まれかねない状況だ」と指摘しています。
そのうえで「過去にも別のメーカーで抗がん剤の供給が止まったことはあったが、今回のように複数のがんで広く使われている薬はなかった。安定供給は製薬企業の使命なので、供給停止の理由の説明や患者への対応などについて責任をもって説明してもらいたい」と話しています。